ファブリー病におけるGLA遺伝子の変異
ファブリー病はα-ガラクトシダーゼ遺伝子(GLA遺伝子)の変異により引き起こされます1,2。
GLA遺伝子には1,000種類を超える変異が報告されています。ファブリー病の原因となる遺伝子変異は1つだけではなく3、ファブリー病を引き起こすGLA遺伝子変異(バリアント)には、さまざまな種類が存在することが知られています4。日本では、1998~2017年に診断された115家系のファブリー病家族(176例:男女各88例)を対象とした調査結果から、以下のように変異の種類とその頻度が報告されています5。
- ミスセンス変異
- ファブリー病家族の52.2%にみられました。
- DNAの翻訳領域の1塩基が変異することにより、本来のアミノ酸ではなく、別のアミノ酸に翻訳されてしまう変異です。
- ナンセンス変異
- ファブリー病家族の14.8%にみられました。
- DNAの翻訳領域の1塩基が変異することにより、本来アミノ酸に翻訳されるはずのコドンが終始コドンに置換される変異です。これによって翻訳が途中で停止し、本来より短いタンパク質が合成されます。
- フレームシフト変異
- ファブリー病家族の13.9%にみられました。
- DNAの翻訳領域で塩基が欠失または挿入されることにより、リーディングフレームがずれて、誤ったタンパク質が合成される変異です。1~2塩基が欠失または挿入される場合、根本的に異なったアミノ酸配列ができるのに対して、3塩基の場合、1つのアミノ酸が欠失または追加されます。
- スプライシング変異
- ファブリー病家族の7.0%にみられました。
- スプライシング部位の変異により、本来除去されるはずのイントロンの除去に異常が生じ、誤ったmRNAが生じる結果、誤ったタンパク質が合成される変異です。
- 大規模な欠失
GLA遺伝子の変異があると、正常なα-ガラクトシダーゼA(α-Gal A)がまったく存在しないか、機能しない異常なα-Gal Aが産生されます3,4。α-Gal Aが正常に機能しない場合、フォールディング異常や不安定化をきたすため、通常であればライソゾームに輸送されるところが、その多くが小胞体で分解されてしまいます4。