ファブリー病とは

ファブリー病は、ライソゾーム病の1種でX連鎖性の遺伝形式をとる、全身に症状があらわれる進行性の疾患であり、男女を問わず発症します1,2

ファブリー病は、ライソゾームに存在する酵素の1つであるα-ガラクトシダーゼA(α-Gal A)をコードするα-ガラクトシダーゼ遺伝子(GLA遺伝子)の変異(遺伝的欠損または活性低下)に起因する疾患です1,2。通常、α-Gal Aにより分解されるグロボトリアオシルセラミド(GL-3)、血漿中グロボトリアオシルスフィンゴシン(Lyso-Gb3)などの糖脂質がライソゾーム内に大量に蓄積することにより、全身のさまざまな臓器が障害されます3,4

GL-3やLyso-Gb3の蓄積は種々の症状を引き起こすだけでなく、炎症誘発経路を活性化することで症状の進行に影響を及ぼしていると考えられており、心臓や腎臓などの線維化や末端器官障害の誘発因子である可能性が示唆されています3,5-7

全身に症状があらわれる進行性の疾患であるファブリー病は1

  • 多様な症状を示します。
  • 患者ごとに症状が異なります。
  • 症状の程度にかかわらず重大な身体的・精神的負担をもたらし、患者の生活に深刻な影響を及ぼします。

ファブリー病のX連鎖性遺伝形式1

オレンジ色のXは異常のあるX染色体を示しています。

ファブリー病の原因となる遺伝子変異をもつ

ファブリー病の原因となる遺伝子変異をもたない

遺伝子変異をもつ母親からの遺伝3

ヘテロ接合体の母親の変異遺伝子が子どもに遺伝する確率は、子どもの性別を問わず50%です。

遺伝子変異をもつ父親からの遺伝3

娘の場合、父親の変異遺伝子が必ず遺伝します。

息子の場合、父親の変異遺伝子が遺伝することはありません。

  • ファブリー病の父親から息子にファブリー病が遺伝することはありませんが、娘には必ず遺伝します3
  • ファブリー病の母親から息子や娘にファブリー病が遺伝する確率は50%です3
ファブリー病の発症率は、従来の推定よりも実際にはもっと高いと考えられています。

従来、ファブリー病の発症率は、出生児40,000~60,000人に1人と推定されてきました1。しかし、日本国内の2006年から2018年に実施された新生児スクリーニングにおいては、ファブリー病の頻度は7,683人に1人と推定されているだけでなく8、海外の新生児スクリーニングにおいても、ファブリー病を引き起こすことが既に知られている遺伝子の変異がみられた男児の割合は4,600人に1人と報告されており、ファブリー病の患者数は従来の推定値よりも多い可能性が示唆されています9

ファブリー病と診断された患者1例につき、同一家系からさらに5例がファブリー病と診断されたという報告もあります10

ファブリー病の診断
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References:

  1. Desnick RJ, Brady R, Barranger J, et al. Fabry disease, an under-recognized multisystemic disorder: expert recommendations for diagnosis, management, and enzyme replacement therapy. Ann Intern Med. 2003;138(4):338-346.
  2. Mehta A, Beck M, Eyskens F, et al. Fabry disease: a review of current management strategies. QJM. 2010;103(9):641-659.
  3. Germain DP. Fabry disease. Orphanet J Rare Dis. 2010;5:30.
  4. Tuttolomondo A, Simonetta I, Duro G, et al. Inter-familial and intra-familial phenotypic variability in three Sicilian families with Anderson-Fabry disease. Oncotarget. 2017;8(37):61415-61424.
  5. Akhtar MM, Elliott PM. Anderson-Fabry disease in heart failure. Biophys Rev. 2018;10(4):1107-1119.
  6. Anastasakis A, Papatheodorou E, Steriotis AK. Fabry disease and cardiovascular involvement. Curr Pharm Des. 2013;19(33):5997-6008.
  7. Rozenfeld P, Feriozzi S. Contribution of inflammatory pathways to Fabry disease pathogenesis. Mol Genet Metab. 2017;122(3):19-27.
  8. Sawada T, Kido J, Yoshida S, et al. Newborn screening for Fabry disease in the western region of Japan. Mol Genet Metab Rep. 2020;22:100562.
  9. Spada M, Pagliardini S, Yasuda M, et al. High incidence of later-onset Fabry disease revealed by newborn screening. Am J Hum Genet. 2006;79(1):31-40.
  10. Laney DA, Bennett RL, Clarke V, et al. Fabry disease practice guidelines: recommendations of the National Society of Genetic Counselors. J Genet Couns. 2013;22(5):555-564.