ファブリー病の表現型と関連する症状

古典型と遅発型(非古典型)

ファブリー病患者は多くの場合、以下の2つの病型に分類されます1,2

  1. 古典型:複数の症状が小児期~青年期にあらわれます。
  2. 遅発型または亜型: 30~50代で発症し、腎臓または心臓に症状が限局することもあります。

いずれの表現型でも、腎不全や心血管系および脳血管系の合併症があらわれることがあります。特に古典型の男性では、透析や腎移植による腎不全治療後に心血管系や脳血管系の合併症が進行した場合、これらの合併症が主な死亡原因となることが報告されています3-6。このため、ファブリー病は、患者ごとに不均一かつ進行性の多様な症状があらわれる臨床的表現型を示す疾患であるという意見もあります2,7

ヘテロ接合体の女性ではファブリー病の症状が多様であり、無症状または軽症の場合もあれば、男性と同様に重度の症状を呈する場合もあります1

表現型

古典型2,8

  • 小児期に症状があらわれ始めます。
  • 全身にあらゆるファブリー病の症状を示します。
    • 症状は進行性で、神経障害性疼痛、肢端感覚異常のほか、「Fabry crises」と呼ばれる、数時間~数日間続く急性疼痛が反復する症状などがみられます。
    • 20歳以降は、腎臓、心臓、脳血管系に重大な合併症をきたします。

遅発型2,8,9

  • 通常、30~50代で発症します。軽症の場合もあれば、持続的に進行し、悪化する場合もあります。
    • 一部の患者では小児期に発症しますが、多くの場合、古典型にみられるようなあらゆるタイプの症状はみられません。
  • 成人期に発症する心型、腎型の亜型は、古典型の患者よりも多くみられます。心疾患や腎疾患を有する中年患者が多いのはこのためであると考えられています。
    • 心型
      • 心型は最も頻繁にみられる亜型です。
      • 症状として、原因不明の心肥大、左室肥大、心筋症、肥大型心筋症、心筋梗塞、不整脈などがみられます。
      • 進行に伴い、脳血管疾患や腎疾患を発症する可能性があるため、早期発見が重要であるとされています。
    • 腎型
      • 主な特徴は末期腎不全です。
      • 進行すると心血管疾患や脳血管疾患を発症する可能性があるため、早期発見が重要であるとされています。
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References:

  1. Desnick RJ, Brady R, Barranger J, et al. Fabry disease, an under-recognized multisystemic disorder: expert recommendations for diagnosis, management, and enzyme replacement therapy. Ann Intern Med. 2003;138(4):338-346.
  2. El-Abassi R, Singhal D, England JD. Fabry’s disease. J Neurol Sci. 2014;344(1-2):5-19.
  3. Desnick RJ, Ioannou YA, Eng CM. Alpha-Galactosidase A deficiency: Fabry disease. In: Scriver CR, Beaudet AL, Sly WS, Valle D, eds. The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease.8th ed. New York, NY: McGraw-Hill; 2001:3733-3774.
  4. Desnick RJ and Banikazemi M. Fabry disease: Clinical spectrum and evidence-based enzyme replacement therapy. Nephrol Ther. 2006; Suppl 2:S172-S185.
  5. Arends M, et al. Characterization of Classical and Nonclassical Fabry Disease: A Multicenter Study. J Am Soc Nephrol. 2017; 28:1631-1641.
  6. Doheny D, et al. Fabry disease: Prevalence of affected males and heterozygotes with pathogenic GLA mutations identified by screening renal, cardiac and stroke clinics, 1995-2017. J Med Genet. 2018;55:261-268.
  7. Germain DP. Fabry disease. Orphanet J Rare Dis. 2010;5:30.
  8. Sivley MD. Fabry disease: a review of ophthalmic and systemic manifestations. Optom Vis Sci. 2013;90(2):e63-e78.
  9. Kusano E, Salto O, Akimoto T, Asano Y. Fabry disease: experience of screening dialysis patients for Fabry disease. Clin Exp Nephrol. 2014;18(2):269-273.